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最高裁判所第三小法廷 昭和32年(オ)64号 判決 1960年12月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人上野開治の上告理由第一点について。

土地改良法一条は、農地の集団化について規定しており、その目的として、農業経営の合理化、農業生産力の発展をかかげ、もつて「食糧その他農産物の生産の維持増産に寄与することを目的とする。」と規定し、また同法一〇一条一項は、「交換分合計画は、耕作者の農業経営の合理化に資するように定めなければならない。」と規定している。農業委員会が、同法九七条二項により農地の交換分合計画を定める場合においても、現実の耕作者の農地の集団化をはかるべきは当然であつて、ために自作していない農地が、所有者から見て分散されることがあつても止むを得ないものといわなければならない。上告人は将来自作する場合を予想してその農地の分散を来す本件交換分合計画の違法を主張するのであるが、将来実現するか否か不確実な上告人の自作を理由として本件交換計画を違法ということはできない。論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決の引用する第一審判決は、本件交換分合計画は広範囲にわたる農地を対象とし、その計画全体の関連において上告人の失地は訴外林田醇美及び同古賀厚の自作地となつたものであり、単に耕作権のみの交換により同法の目的を達し得ないため農地所有権の交換をも必要とするに至つたものである旨認定しているのであつて、右第一審判決は、所論のように、所有権の交換分合を第一の手段とすべきものとしてはいないのである。論旨は原判示にそわない主張であつて採用できない。

同第三点について。

同法による権利の交換分合は、前述のように農業経営の合理化、農業生産力の発展を目的とし、公共の福祉のために行われるのであるから、そのためには、必要に応じ耕作権のみならず所有権の交換分合をも行い得るものであつて、同法を右のように解したからといつて、同法が憲法二九条三項に反するものということはできない。

以上説明のとおり本件上告はすべて理由がないからこれを棄却することとし民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高橋潔 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一)

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